南アフリカ共和国の教育事情について
南アフリカ共和国の教育事情について
南アフリカ共和国の教育事情は、「アパルトヘイト」(人種隔離政策)無しに語ることは出来ません。そして、現在もアパルトヘイト政策の「負の遺産」として教育事情は大変大きな課題を抱えています。
アパルトヘイト期の過去の教育事情と、現在のポスト・アパルトヘイト教育事情を紹介します。
《アパルトヘイト時代(1993年まで)》
アパルトヘイトは「人種隔離政策」と呼ばれますが、当時白人国家だった南アフリカ連邦では、有色人種たちを自然資源の乏しい土地に強制移住させ、その土地を「ホームランド」と称して、「独立自治体(バンツースタン)」として関わった。
しかし、このホームランド、国連をはじめ、世界中で各地の「ホームランド」を「国」として認めず、南アフリカはこのアパルトヘイト政策を断行したことにより、世界中から非難を浴びた。
・黒人(有色人種)は事実上義務教育の対象ではなかった。バンツースタン教育(Bantustans Education)扱いだった。
・国としては、白人のみ義務教育対象とし、先進国並みの教育水準・教育環境だった。
・現在の黒人の過半数の成人は、事実上の非識字者(Functionally Illiterate)である。
元来、黒人が用いる9つの現地公用語は、口承言語なので、専用文字が無い。
後に、9つの言語は強制的にアルファベット化した。これは日本語のヘボン式ローマ字に似ている。
・6年間の学校卒業後、2年間の教員養成コースでほぼ誰でも教師になれた。
教員としてのスキルがそもそも充分でなかった。
《マンデラ新政権発足後(1994年から)》
国民全体の義務教育(小7=中学2年生)の実施を国家的課題とした結果、数的には目標を達成した。(現在の就学率は約95%)
・文部省予算に国家予算を最も多く配分
・全国の隅々まで学校を建設し 26,000校を運営するも、大半の学校には図書室が無い。
・貧困地域は学費、給食を無料にするなどし9割を超える就学率。
・雇用機会均等法のお陰もあり 黒人の先生の急増。
・2011年までに幼稚園(G-R)の義務教育化、小学校に併設。
《今日の課題は いかに質的拡充が実施できるか》
・低学年の「読み書き・そろばん」の能力の向上への認識。
小学校3年全国学力調査合格率 Literacy 36%、Numeracy 35%
・図書の配布や(”US Aids”;本100冊を約1万校に配布)
授業で読書タイムの設定(”Drop & Read”;西ケープ州)
・低学年担当の先生の能力向上 (トレイニング、人事制度)。
・低学年担当教員の図書利用を習慣づけ。
《ズマ大統領新政権(2009年5月より)》
2009年5月に実施された南アの総選挙の重要な争点でもあった。(教育格差の拡大が課題)
・ズマ大統領就任演説での言及。
「南アフリカにとってまず解決すべき問題は、第1は教育、第2は健康(HIV対策)。第3が経済・雇用政策で、第4が治安問題である!」
・文部省の分割 ”初等教育省”と”高等教育省”
「読み書き・そろばん」向上は初等教育省が管轄し、高等教育省では、大学などの高等専門教育機関や職業訓練などを管轄。
《現在の識字教育について》
1、2年生 アルファベット表記の部族語書籍で読み書きを習得
3年生 英語教育の開始
4年生から 全ての教科を英語で教える
・11の公用語;英語、アフリカーンス語(オランダ語系言語)と9つの部族語(ズールー、コサ、ツワナなど)
・部族語は、文字を持たない口承言語の為、アルファベット表記。また国の教育政策方針として、部族語の伝承も重視している。